Ortance「ESCARGOT」
01.Prélude pour Hortense
02.Muse Skip
03.Escargot(Vocal:Kiala)
04.Tutuala Drink
05.Baroque Pearl(Vocal:ermhoi)
06.East of Eden(Vocal : Kiala)
07.Nega Posi
08.Even Shuffle
09.Space Dragonfly
10.Black Morpho
11.Unknown Lettura
* * *
<Ortanceについてもう少し詳しく>
バンド名は、坪口が敬愛する画家ポール・セザンヌの奥さんの名前Hortenseからとり和製英語的表記にしたもの。あじさい(Hortensia)の意もあり。絵画的な印象とヨーロピアンな女性のイメージを持たせたかった。
まず第一に(坪口としては)ジャズの作法を封印したことが大きい。元曲をいかに即興的にバリエイションできるか、アドリブで広げられるか、ということを想定しない作曲をすることで別次元の自由を獲得。クラシカルだったりアンビエントだったり。結果的にソロ的なシーンはあるにせよ。
Ortanceでの坪口は楽曲の道標役。シンセベースを弾きながら上物も弾くのは忙しいが、最小限の音でメロディやハーモニーを表現することになり、歌心や深みが増す。ベースとコードを完全にシンクロできる。ということは全く一致させないズラしプレイも可能。
Ortance立ち上げ期、Flying Lotusを音色の規範としていたが、作曲した段階で、ピアノソロでも成り立つ楽曲が揃ってしまったのは自分でも意外。
それを裏付けるエピソードとして、初演直前の盛岡でのソロピアノで4曲ほど予行練習的に披露したところ、幼なじみの親友が今までにない坪口だと言って喜んでくれた。
Flying Lotusをカバーしたことで、シンセ音色のパレットが更新/確立された(もちろん日々更新中)。オリジナル曲もその音色を使うことで、ネオ80’s的なテイストが表現できる。フレーズをアドリブ的に変化させるよりも、ペダルでのフィルター・コントロールが最重要である。
坪口が7割方楽音を担っている一方で、西田修大は最も自由で、たまに楽音も弾くが美ノイジーにその周りにまとわりつく。そのハイセンスなGuitar with EffectがOrtanceの大きな魅力。他のサポートワーク含めここまで音楽に寄り添えるギタリストも珍しいが、Ortanceではゆがみやコラージュ感で存在感を発揮し演奏をダイナミックにしてくれる。
大井一彌のドラムはゴーストノートが皆無でフィルインの代わりにBreakする、テンポはクリックのごとく正確。リズムマシン的な発想を具現していて、それによって情感に溺れさせず音楽をハイパーな印象にする。このところ安定感が圧倒的で、あんなに音を抜いてもブレないスタイルは類を見ない。
ゲストのermhoi(Vo)は大好きな無国籍感を注入してくれるし、Ortanceの音楽的輪郭が不思議とくっきりする。歌があるからこその実験性と、楽器の一部のようだけど歌えるものなんだという安心感の両立。欠かせない存在。
それぞれが自分をキープしているけど周りを尊重している。相手をしっかり聴いているけどあえて合わせないで平気でいる美学。これぞ本当の個人主義。利己主義じゃなく。それを具現しているのがOrtance。
坪口昌恭:慣れないことを演やらなくてはいけないのに自分らしさが出せる。
西田修大:やりたいのに他では演れなかったこと(エフェクティブな奏法)がガッツリやれる。
大井一彌:いつもやっていることをやると面白がられる。
(現在は超越してしまい当てはまらないかもだけど)
人力と文明の利器を共に活用するのが好きなのは音楽だけでなく、例えば動く歩道がある場合必ず乗って歩く派。そして降りる際に速度が落ちないように早足になる。これ西田も同じらしい。Ortanceはそういう感性の一致したバンドです(笑)
とてもうれしかった一彌のTweet↓
「ジャズシンセ奏者の坪口昌恭さんとバンドをやらせて頂いています。音楽市場へのシンセサイザー浸透の黎明期から第一線に居た彼の、生き字引のようでいて、かつ全ての世代との驚異的な互換性を発揮するプレイにいつも感銘を受けています」
互換性だってよ!
1st Album "ESCARGOT"について↓
レコーディング時点からのコンセプトは、テンポで遊ぶということ。わざわざ違うテンポで録って戻したり。
DAWやDTMの質感を持ちつつ、その手法ではやりづらいアイデアをあえて盛り込んでいる。
タイトル曲《ESCARGOT》は、テンポ揺らがしアイデアで、口ドラムとUplight Pianoの弾き語りを生録したものをAbleton Liveで丸々Audio→MIDI変換し構築してできた。つまりクリックなしのリアルタイム演奏。種明かしするために口ドラム音を残してある。
《Even Shuffle》は〈小泉文夫による「四種のテトラコルド」〉からできている。
Am7 都節音階 Em7 民謡音階 F#m7 律音階 EM7 沖縄音階
BassはModularで制御しクオンタイズを変えてゆく。ビートが裏返ったりしてるのはあえて。
2nd Albumは、アナログ系シンセ大活躍のDrum'n Bass、Techno、Houseビート系トラックに挟まれる形で、ermhoiフィーチャーによる歌モノ(坪口初の日本語作詞)、ピアノ主体のチルアウトなトラックも収録している。
Ortanceには、TZBで培ったマンマシーンのセンス、intoxicateでの分析、モジュラーシンセ、大学でのジャズピアノレッスン(左手ベースを年がら年中弾いている)、バリーハリス・メソッド、原田知世サポート(伊藤ゴロー)、RM jazz legacy、映画やアニメのサントラ制作等の経験が落とし込まれている。
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